「星空撮影の設定は、結局どれが正解なのか」——検索すると、ISO 6400、シャッター25秒、いや10秒、とバラバラな数字が並んで迷います。実はこの迷いには理由があって、正解の数字が1つに決まらないからです。使うレンズの焦点距離で、星が流れずに写る限界の秒数が変わるためです。
この記事では、Sony・OM SYSTEMのメーカー公式の案内と、国立天文台の暦計算室の情報だけを根拠に、星空撮影の設定を整理します。いちばん大事なのは、「500÷焦点距離」でシャッターの上限秒数を計算するという考え方です。これを知っていると、レンズが変わっても迷わなくなります。
- 公式情報に基づく星空撮影の設定の目安(絞り・シャッター・ISO)
- 星が流れない秒数を決める「500÷焦点距離」の計算と早見表
- ピントの合わせ方と、見落としやすい設定(手ぶれ補正・長秒時ノイズ低減)
- 撮影に向く夜の選び方——今年の新月の日付(国立天文台)
- 月と流星は、星とは別の設定になる理由
💡 この記事は一眼レフ・ミラーレス向けの設定です。スマホで星空を撮る方は星空のスマホ撮影ガイドを、オーロラはオーロラ撮影のカメラ設定をご覧ください。
先に結論:Mモード・開放・15〜30秒・ISO 800〜3200
まず、Sony公式の案内にある「星を点で写す設定」を中心に、目安を一覧にします。これは出発点であり、レンズの焦点距離と空の暗さで調整するものです。
| 項目 | 目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 撮影モード | M(マニュアル露出) | Sony公式 |
| 絞り(F値) | できるだけ小さく(開放付近) | Sony公式 |
| シャッタースピード | 15〜30秒。上限は500÷焦点距離 | Sony公式(幅と計算式) |
| ISO感度 | 800〜3200 | Sony公式。OM SYSTEMの例はISO 3200(F1.2・5秒) |
| ピント | マニュアルフォーカス。星を拡大して確認 | Sony・OM SYSTEM公式 |
| 手ぶれ補正 | オフ | Sony公式(誤作動を防ぐため) |
| 三脚・リモート | 必須 | OM SYSTEM公式 |
ここで、よくある書き方との違いに気づく方もいると思います。「シャッター15〜25秒、ISO 3200〜6400が星空撮影の黄金比」という断定は、公式の案内では確認できません。Sonyの案内は「15〜30秒」「ISO 800〜3200」で、しかもシャッターは焦点距離で上限が変わります。次の節で、その理由を説明します。
星が「線」になる理由と、500÷焦点距離
星空の写真で、星が点ではなく短い線になってしまった経験はありませんか。Sony公式は、その理由をこう説明しています。
「北極点を中心に星が回っているように見える動きを日周運動と呼びますが、この日周運動のため、カメラを固定したまま長時間露光すると星は線になって写ります」
地球が自転しているので、星は少しずつ動いています。だから露光が長すぎると、星が動いた軌跡が写ってしまうのです。それを避けるための目安が、Sonyの案内にある次の計算式です。
- 35mmフルサイズ:500÷焦点距離(秒)
- APS-C:500÷(焦点距離×1.5)(秒)
この式で計算した早見表がこちらです(小数点以下は四捨五入。Sony公式の「15〜30秒」の幅を超える場合は、30秒を上限と考えてください)。
| センサー | レンズの焦点距離 | 星が流れにくい上限の目安 |
|---|---|---|
| フルサイズ | 14mm | 約36秒(→30秒まで) |
| 20mm | 25秒 | |
| 35mm | 約14秒 | |
| 50mm | 10秒 | |
| APS-C | 11mm | 約30秒 |
| 16mm | 約21秒 | |
| 35mm | 約9.5秒 |
この表から、はっきり分かることがあります。広角になるほど、長く露光できます。14mmなら30秒まで粘れるのに対し、50mmなら10秒が限界です。「15〜25秒で撮る」と固定してしまうと、広角なら露光が足りず、標準レンズでは長すぎて星が流れることになります。
ひとつ補足します。これは目安の計算式で、星がまったく動かないという保証ではありません。写真を拡大して、星が点に見えるか確認してください。大きく引き伸ばして使うなら、さらに短めにするのが安全です。
絞りは開放、ISOは800〜3200から
Sony公式は、絞りを「できるだけ小さく」としています。明るく開けたほうが、暗い星の光をたくさん取り込めるからです。そのうえで、ISOは800〜3200が目安です。
OM SYSTEMの公式ページには、「M モード、ISO 3200、F1.2、5秒」という例も載っています。これはF1.2という非常に明るいレンズでの例です。明るいレンズなら、露光時間を短くできます。つまり、レンズが明るいほど、シャッターを短くしても同じ明るさで撮れるので、星が流れにくく、同時に高いISOに頼らずに済みます。
だから、星空撮影のためにレンズを買うなら、焦点距離が短く、F値が小さいレンズが最優先になります。ちなみにSonyの案内には、使用例として「FE 14mm F1.8 GM」「E 11mm F1.8」という広角の明るいレンズが挙げられています。
ピントは「マニュアル」で、星を拡大して確認する
暗い空ではオートフォーカスは使えません。公式の案内はこうです。
- OM SYSTEM:「明るい星にピントを合わせるか、星が見えないときは、遠く離れた明かりにピントを合わせます。ピントはマニュアルフォーカス(MF)で合わせます」。「星空AF」機能を搭載した機種では、自動でピントを合わせることもできます
- Sony:「ピント拡大機能を使うなどして、星にピントが合っているか確認しましょう」
ピントがずれた星空は、あとから直せません。仮に1枚撮って、画面を拡大して、星が最も小さい点に見えるか確認する。この手間を惜しまないでください。星は動くので、時間が経ってからもう一度確認するのも有効です。
見落としやすい3つの設定
① 手ぶれ補正はオフにする。Sony公式は「三脚使用時は手ブレ補正機能の誤作動を防ぐため、手ブレ補正機能をオフに設定します」と案内しています。三脚に固定しているのに補正機能が働くと、かえって誤作動することがあるためです。
② 長秒時ノイズ低減の仕組みを知っておく。Sony公式によると、この機能を「入」にすると、「シャッターを開けていた時間と同じ時間ノイズ軽減処理が働く」とあります。30秒撮れば、そのあと30秒待たされるということです。連続でたくさん撮りたい夜は、この待ち時間が大きな損失になるので、オンにするかどうかを事前に決めておきましょう。
③ 三脚とリモート操作を使う。OM SYSTEM公式は、「三脚とリモートケーブルを用意し、カメラを固定」することを案内しています。長い露光では、シャッターボタンを指で押す振動も写り込むからです。
撮影に向く夜は「新月」——今年の日付(国立天文台)
設定よりも先に、星空の出来を左右するのが「月の明るさ」です。Sony公式は、こう案内しています。
「月が出ていると小さな星は月明かりに隠されてしまうので、新月の夜など月明かりの影響がないときを選んで撮影しましょう」
国立天文台の暦計算室が公表している、これから先の新月(朔)の日時はこちらです。
| 新月(朔) | 日時 |
|---|---|
| 2026年10月 | 10月8日 15時29分 |
| 2026年11月 | 11月7日 18時52分 |
| 2026年12月 | 12月7日 11時53分 |
| 2027年1月 | 1月17日 12時03分 |
新月の瞬間の前後の数日間は、月がほとんど空にありません。星空撮影に出かける日程は、この前後の晴れた夜を中心に組むと、成功率がぐっと上がります。ちなみに国立天文台の2026年の天文情報には、12月のふたご座流星群について「月明かりの影響のない良い条件で見られるでしょう」と書かれています。
そしてもうひとつ、人工の明かりが少ない場所を選ぶこと。Sony公式も「できるだけ人工の明かりが少ない場所を選んで」と案内しています。街明かりの強い場所では、どんな設定をしても星は浮かびません。
月と流星は、星とは別の設定になる
同じ夜空でも、被写体によって設定がまったく違います。Sony公式の案内を並べると、その差がよく分かります。
| 被写体 | 絞り | シャッタースピード | ISO感度 |
|---|---|---|---|
| 星(点で写す) | できるだけ小さく | 15〜30秒 | 800〜3200 |
| 流星(インターバル撮影) | できるだけ小さく | 15秒 | 3200から |
| 月 | F8〜F10 | 1/125〜1/800秒 | 100〜400 |
月は、見た目の印象よりずっと明るい被写体です。星と同じ設定(15秒・ISO 3200)で撮ると、月は真っ白に飛んでしまいます。月の撮り方は月・天体撮影ガイドにまとめています。
流星は、いつどこに現れるか分からないので、インターバル撮影で連続して撮り続ける方法が公式に案内されています。1枚ずつ構えて待つ撮り方は向きません。今年の12月のふたご座流星群に向けた設定と時間帯は、ふたご座流星群の撮り方【2026年】で詳しく整理しています。星や夜景の動きを動画にまとめるタイムラプスの撮影間隔・撮影時間の決め方は、タイムラプス撮影の設定ガイドで解説しています。
構図のコツ——星だけでなく「前景」を入れる
ここからは公式の設定ではなく、写真としての考え方です。星空は、星だけを写すと意外と平凡な写真になります。地上の風景を入れるだけで、写真にスケール感と物語が生まれます。
- シルエットになる山や木、建物——空の明るさとの対比で、星が際立ちます
- テントや人影——旅先らしさが出ます。光は控えめに
- 水面——星が映り込む風景は、それだけで印象に残ります
地平線が傾かないよう、水準器やグリッドを表示しておくと失敗が減ります。広角レンズは、前景を入れても空を広く写せるので、構図の自由度が高いのも利点です。
機材は「明るい広角レンズ」と「三脚」の2つ
設定を詰める前に、機材で差がつくのは、この2つです。まず、Sony公式が使用例に挙げているレンズの1本が、次の広角レンズです。
そして、三脚は必須です。数十秒の露光のあいだ、微動だにしないことが求められます。旅先に持っていくなら、軽さと安定のバランスで選ぶのが現実的です。
カメラ本体は、暗所で高感度に強いものほど有利ですが、機種の優劣より先に、「明るい広角レンズ」「三脚」「リモート操作」の3つをそろえるほうが効果が大きいはずです。機種選びの参考にはミラーレスおすすめランキングやSony α7C II レビューをご覧ください。
よくある質問
星空撮影のカメラ設定の目安を教えてください。
Sony公式の案内では、Mモードで絞りはできるだけ小さく(開放付近)、シャッタースピードは15〜30秒、ISO感度は800〜3200が目安です。ピントはマニュアルで合わせ、星を拡大して確認します。三脚に固定するときは手ぶれ補正をオフにします。シャッターの上限は焦点距離で変わるため、「500÷焦点距離」で計算してください。
星が線にならないシャッタースピードは何秒までですか?
Sony公式の目安は、35mmフルサイズなら「500÷焦点距離」秒、APS-Cなら「500÷(焦点距離×1.5)」秒です。たとえばフルサイズの20mmなら25秒、50mmなら10秒、APS-Cの16mmなら約21秒です。地球の自転(日周運動)で星が動くためで、あくまで目安なので、撮影後に拡大して点に見えるか確認してください。
ISO感度は3200〜6400にしないと撮れませんか?
Sony公式が星を点で写す設定として挙げているのは、ISO 800〜3200です。OM SYSTEMの公式例もISO 3200で、F1.2という非常に明るいレンズで露光を5秒に短縮しています。ISO 6400が必須という記述は公式では確認できませんでした。まず800〜3200で撮り、暗さが足りないときにレンズの明るさやシャッターの上限を見直すのが基本です。
星空のピントはどうやって合わせますか?
マニュアルフォーカスで合わせます。OM SYSTEMの公式案内では、明るい星にピントを合わせ、星が見えないときは遠くの明かりに合わせるとされています。Sony公式は、ピント拡大機能で星にピントが合っているか確認するよう案内しています。「星空AF」機能を搭載した機種なら、自動でピントを合わせることもできます。
長秒時ノイズ低減はオンにするべきですか?
Sony公式によると、オンにするとシャッターを開けていた時間と同じ時間だけノイズ軽減の処理が働きます。30秒撮れば30秒待たされるということです。たくさん連続で撮りたい夜は、この待ち時間を考えてオン・オフを決めてください。
星空を撮るのに、いつがいちばんいいですか?
Sony公式は、月明かりの影響がない新月の夜などを選ぶよう案内しています。国立天文台によると、これからの新月は2026年10月8日15時29分、11月7日18時52分、12月7日11時53分、2027年1月17日12時03分です。その前後の晴れた夜で、人工の明かりが少ない場所を選んでください。
まとめ
星空撮影の設定は、「Mモード・絞りは開放・シャッターは500÷焦点距離まで(15〜30秒)・ISO 800〜3200・ピントはMFで拡大確認・手ぶれ補正オフ」が出発点です。そして、数字を1つに決めつけず、レンズの焦点距離で上限秒数を計算してください。広角ほど長く、標準レンズほど短く。これが、15〜25秒という固定の数字より、はるかに確実な考え方です。
設定よりも先に、新月の夜と暗い場所を選ぶこと。次の新月は10月8日です。晴れる夜を待って、まずは広角レンズと三脚で試してみてください。
Tabi