旅先で撮った写真をSNSに載せようとして、手が止まったことはありませんか。通りがかりの人が写っている、美術館の作品が写っている、銅像や建物が写っている、キャラクターの看板が写っている——「これ、載せて大丈夫?」と迷う場面は、意外と多いものです。
この記事では、文化庁・最高裁判所・総務省・法務省・外務省の公的な資料をもとに、写真の著作権、写り込み、屋外の銅像や建物、人が写った写真の肖像権とSNS投稿、海外の撮影禁止場所、困ったときの相談先を整理しました。
⚠️ この記事は、一般的な情報の紹介です。法律相談や、法的な助言ではありません。法律や運用は変わることがあり、個別の事情で結論が変わります。2026年10月時点で確認できた公的資料をもとにしています。具体的に迷ったときは、弁護士などの専門家、施設、現地の当局に確認してください。
- 自分が撮った写真の著作権は、誰のものか
- 背景に作品が写り込んだとき、屋外の銅像や建物を撮ったときの考え方
- 肖像権とパブリシティ権とは何か(最高裁判所の説明)
- 人が写った写真を、SNSに載せるときの目安
- 海外で撮ってはいけない場所と、困ったときの相談先
💡 この記事は「権利の基本」に特化しています。街で人を撮るときのマナーは街スナップ撮影ガイド、美術館の撮影ルールは美術館・博物館の撮影ガイド、神社・お寺は神社・お寺の撮影ガイドをご覧ください。
先に結論:自分の写真は自分のもの。ただし、写っているものの権利は別
先に、押さえたいことを3つにまとめます。
1. 撮った写真の著作権は、原則として撮った人のもの。文化庁の説明では、著作物は、創作した時点で、手続きなしに著作権が発生します。スマートフォンで撮った写真も、定義を満たせば著作物です。
2. 人が写っていれば、写っている人に肖像権がある。総務省は、ネットやSNSで公開するときは、許諾が必要になる場合がある、と説明しています。肖像権は、法律に書かれたものではなく、判例によって確立された権利です(文化庁)。
3. 施設のルールと、海外の法律は、また別。撮影禁止の場所や、海外の撮影禁止の施設が、別に決まっています。
著作権:自分の写真と、写り込む他人の著作物
文化庁の「著作権テキスト」では、著作物は、「思想又は感情を、創作的に、表現したもの」で、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するもの、と定義されています。上手い下手や、芸術的な価値は関係なく、手紙やスマートフォンで撮った写真も、この定義を満たせば著作物になります。
| 場面 | 考え方 | 出典 |
|---|---|---|
| 自分で撮った風景・スナップ写真 | 撮った人(あなた)が著作者。創作した時点で、手続きなしに著作権が発生する。スマホで撮った写真も、定義を満たせば著作物 | 文化庁 |
| 背景に、絵やポスターが小さく写り込んだ | 写り込みの例外(著作権法30条の2)が使える場合がある。条件は、軽微な構成部分であること、正当な範囲の利用であること、著作権者の利益を不当に害しないこと。ブログへの掲載もできる | 文化庁 |
| 展示されている作品を、主役として撮った | 写り込みの例外は使えない。館の撮影ルールに従う。著作権が生きている作品は、撮影できても公開できない場合がある | 文化庁、美術館・博物館の撮影ガイド |
| 屋外にある銅像・建物を撮った | 屋外に恒常的に設置された美術品・建築物は、著作権法46条で利用できる場合がある。ただし、美術品の複製を販売する目的などは対象外 | 文化庁 |
| 他人が撮った写真を、そのまま載せたい | 撮った人に事前に相談する。無断での掲載は、著作権や肖像権の問題になりうる | 総務省 |
写り込みの例外について、文化庁は、写真撮影のときに、本来の撮影対象以外の著作物が写り込む場合のための規定だと説明しています。本来の撮影対象としてポスターを撮った場合などは、対象になりません。
屋外の美術品・建築物の例外(46条)は、次のいずれにも当たらないことが条件です。彫刻を増製する場合、全く同じ建築物を造る場合、一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合、美術品について複製の販売を目的とする場合。慣行があるときは、出所の明示が必要です(文化庁)。
肖像権とパブリシティ権
文化庁は、肖像権を、自己の氏名や肖像を、みだりに他人に公開されない権利で、プライバシー権の一種、と説明しています。また、著名人の氏名や肖像が持つ、商品の販売を促す力(顧客吸引力)に基づく権利を、パブリシティ権と呼びます。日本では、法律に、肖像権やパブリシティ権を規定したものはなく、判例によって確立された権利です。
最高裁判所は、平成24年2月2日の判決で、人の氏名や肖像等は、個人の人格の象徴であるから、人格権に由来するものとして、みだりに利用されない権利を有すると解される、と述べています。先例として、昭和44年12月24日の大法廷判決と、平成17年11月10日の第一小法廷判決が引用されています。
パブリシティ権については、同じ判決で、肖像等を無断で使う行為が、①肖像等そのものを、独立して鑑賞の対象となる商品等として使う、②商品等の差別化を図る目的で、商品等に付ける、③商品等の広告として使う、など、専ら肖像等の持つ顧客吸引力の利用を目的とする場合に、違法となる、と示されています。
旅行者の場合、有名人が写った写真を、広告や、販売するグッズに使うことは避けてください。
人が写った写真を、SNSに載せるときの目安
総務省は、写真に人物が写っている場合、撮影者の著作権に加えて、写っている人にも肖像権があり、ネットやSNSで公開するときは、許諾が必要になる場合がある、と説明しています。どこからが違法になるのか、という具体的な線引きは、公式の資料には書かれていません。個別の事情で判断されます。
| 場面 | 目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 特定の人が主役の写真 | 声をかけて承諾をもらう。SNS公開や、ブログ・販売などの利用なら、特にはっきり確認する | 総務省、筆者の目安 |
| 群衆の中の、顔が小さな写り込み | 問題になりにくいと考えられるが、保証はできない。迷ったら別のカットを選ぶ | 筆者の考え |
| 子どもが写っている | 特に慎重に。保護者への確認や、後ろ姿・ぼかしを検討する | 総務省、街スナップ撮影ガイド |
| 有名人・キャラクターが写っている | 広告や商品に使うのは避ける。パブリシティ権の問題になりうる | 最高裁判所(平成24年判決) |
| 友人・家族の写真 | 本人に確認してから載せる | 総務省 |
| 広告・販売など、商用で使う | 許諾が必要になる場合が多い。事前に確認する | 筆者の考え |
表の「筆者の考え・目安」は、公的資料にある一般的な説明を、旅の場面に当てはめたものです。法的な保証ではありません。迷ったときは、撮らない、載せない、ぼかす、後ろ姿にする、といった選択が、いちばん安全です。
自分の写真を、他人に載せないでほしい、と頼まれたときは、削除に応じてください。総務省も、無断投稿の削除を求める場合は、撮影者に削除を依頼する、と案内しています。
写り込んだ人を、あとから消す選択肢
主役ではない人が、背景に写り込んでしまった写真は、編集で消す方法があります。アドビは、Lightroomの「生成AI削除」で、背景に写り込んだ人物や群衆、電柱・標識・電線などの不要なものを取り除ける、と案内しています。「削除」ツールを選んで、生成AIをオンにし、消したい部分をなぞる使い方です。結果は、候補を3つ確認して選べます。
ただし、消す前の写真は、そのまま手元に残してください。また、消した写真は、現場の事実とは違う写真になります。報道や記録の目的で使う写真には、向きません(筆者の注意です)。
海外では、撮ってはいけない場所がある
外務省の海外安全ホームページ(海外邦人事件簿「写真撮影は慎重に」)は、海外では、軍事施設はもちろん、空港・港湾・王宮・政府施設なども、撮影が禁止されている場合が多い、と案内しています。風景や施設を撮るときは、近くに撮影禁止の標識がないか確認し、通りがかりの警察官に尋ねるなど、細心の注意を払うよう求めています。
- 事例:ヨーロッパで森を散策していた女性が、風景を撮ったところ、近くの軍事施設を撮影したと疑われ、その場で逮捕された例や、中央アジアの港で夕焼けを撮っていた男性が、軍事港湾施設を撮影したと疑われて逮捕された例が紹介されています。
- 写り込みにも注意:外務省は、遠くからの撮影でも、撮影禁止の場所や施設が写り込む場合があり、意図せず撮影した場合でも、治安当局に拘束される場合がある、と注意しています。
- 国ごとに違う:肖像権や撮影のルールは、国・地域で異なります。出発前に、渡航先の情報を確認してください。
施設・イベントのルールは、また別
著作権や肖像権とは別に、美術館、テーマパーク、ライブ、神社・お寺などは、施設ごとに撮影のルールがあります。館内の掲示や公式サイトで、確認してください。
SNSに載せる前の、5つのチェック
- 誰が主役か:特定の人が主役なら、承諾を得る(総務省)
- 作品・キャラクターが主役か:主役なら、写り込みの例外は使えない(文化庁)
- 子どもが写っていないか:写っていれば、特に慎重に(総務省)
- 施設のルールを守っているか:撮影可でも、公開は不可の場合がある
- 商用に使わないか:広告や販売に使うなら、事前に確認する(筆者の考え)
1〜2点目は公的資料、4点目は美術館・博物館の撮影ガイド、5点目は筆者の考えです。
困ったときの相談先
自分の写真が、無断で使われた。あるいは、載せた写真について、削除を求められて困っている——そんなときは、次の窓口があります。
- みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル):電話0570-003-110。最寄りの法務局につながります(法務省)
- インターネット人権相談受付窓口:法務省のウェブサイトから相談できます
- 違法・有害情報相談センター:総務省の、インターネット上の違法・有害情報に関する相談窓口です
よくある質問(FAQ)
旅先で撮った写真に他人が写っていたら、SNSに載せてもいいですか?
決まった線引きは、公式の資料にはありません。総務省は、写真に人物が写っている場合、写っている人に肖像権があり、ネットやSNSで公開するときは許諾が必要になる場合がある、と説明しています。特定の人が主役なら、声をかけて承諾をもらうのが安全です。顔が小さく、誰か分からない程度の写り込みは、問題になりにくいと考えられますが、保証はできません(筆者の考えです)。迷ったら、顔をぼかす、後ろ姿のカットを選ぶ、といった方法があります。背景に写り込んだ人は、あとから編集で消す方法もあります。
美術館で撮った作品の写真を、SNSに載せていいですか?
館のルールと、作品の著作権の両方を確認してください。撮影が許可されていても、公開は認めていない作品があります(美術館・博物館の撮影ガイド)。また、文化庁の説明では、写り込み(著作権法30条の2)の例外は、背景に小さく写り込む場合のためのもので、作品そのものを撮影対象にした場合には使えません。
銅像や建物の写真は、載せてもいいですか?
文化庁の説明では、一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置されている美術品や建築物は、著作権法46条により、利用できる場合があります。ただし、彫刻を増製する場合、同じ建築物を造る場合、美術品の複製を販売する目的の場合などは、この例外に当たりません。絵はがきやグッズにして売る場合は、事前に確認してください。
友だちや家族の写真を、SNSに載せるときの注意は?
総務省は、友人の写真や動画を許可なく掲載することは、肖像権などの侵害に当たる可能性がある、と説明しています。自分の子どもの写真でも、本人の意思や気持ちを尊重して承諾を得ることが大切で、小さい子どもの場合は、SNSに公表する意味を理解できないため、慎重に判断するよう案内されています。
海外で、撮ってはいけない場所はありますか?
あります。外務省の海外安全ホームページは、海外では、軍事施設はもちろん、空港・港湾・王宮・政府施設なども撮影が禁止されている場合が多く、近くに撮影禁止の標識がないか確認する、通りがかりの警察官に尋ねるなどの注意が必要だと案内しています。撮るつもりのなかった施設が、遠くに写り込んでも、拘束される場合があるとされています。
まとめ:迷ったら、載せる前にひと呼吸
- 自分が撮った写真の著作権は、撮った人のもの
- 人が写った写真は、写っている人の肖像権に配慮する
- 施設のルールと、海外の撮影禁止場所は、別に確認する
- 迷ったら、載せない・ぼかす・声をかける
最後の判断は、ご自分で決めてください。この記事は、一般的な情報であり、法的な助言ではありません。
Tabi