オーロラを撮りに行く方の多くが、まず検索するのが「カメラ設定」です。ところが、設定の説明は記事によってかなりバラバラで、「シャッターは15〜25秒」と書かれていることもあれば、「5〜10秒」とあることもあります。どれが正しいのでしょうか。
この記事では、カメラメーカー(Nikon・OM SYSTEM)の公式情報と、アラスカのフェアバンクス観光局が公表しているシーズン情報だけを根拠に、オーロラ撮影の設定と準備を整理します。結論から言うと、シャッタースピードは「長いほど明るく撮れる」わけではなく、長すぎるとオーロラの形がぼやけます。
- 公式情報に基づくオーロラ撮影の設定の目安(絞り・シャッター・ISO・ピント)
- 「15〜25秒」が長すぎる理由と、4〜8秒が勧められる理由
- 見られる時期と、見られる確率の考え方(フェアバンクス観光局)
- 手ぶれ補正をオフにする理由など、見落としやすい3つの設定
- スマホでオーロラは撮れるのか
💡 この記事はオーロラ撮影に特化しています。星空全般の撮り方は星空撮影の設定ガイドを、スマホで夜空を撮る方は星空のスマホ撮影ガイドをご覧ください。
先に結論:設定の目安は「明るいレンズ・数秒〜十数秒・ISO 1600前後」
細かい理由は後で説明するとして、まず目安を一覧にします。これはあくまで出発点です。OM SYSTEMの公式ページにも「オーロラの明るさや求める表現に応じて設定を変更」と注記があるとおり、その晩のオーロラを見ながら調整するものだからです。
| 項目 | 目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 撮影モード | マニュアル(M) | OM SYSTEM公式の基本設定 |
| レンズ | f/1.8〜f/2.8の広角。絞りは開放付近 | Nikon公式:「f/1.8 or f/2.8」、開放で最大限の光を取り込む |
| シャッタースピード | 4〜10秒前後から(公式の幅は2〜30秒) | Nikon公式:2〜30秒。30秒より4〜8秒のほうが形がくっきり。OM公式の例は15秒 |
| ISO感度 | 1600前後から。明るさに応じて調整 | Nikon公式の例は1600〜3200。OM公式の例は400(レンズは12mm F2.0) |
| ピント | 無限遠に固定 | Nikon・OM公式(後述) |
| 手ぶれ補正 | オフ | OM SYSTEM公式 |
| ホワイトバランス | OM公式の例は「晴天(5300K)」。RAWなら後から調整できる | OM SYSTEM公式 |
ISOの幅が大きく違うのは、レンズの明るさやセンサーの大きさ、その晩のオーロラの明るさで変わるからです。「ISO 3200〜6400が必須」といった言い切りは、公式の記述では確認できませんでした。まず1600前後で撮ってみて、画面の明るさを見ながら上下させてください。
「15〜25秒」が長すぎる理由
オーロラ撮影の記事で、よく「15〜25秒」と書かれています。でも、これを鵜呑みにすると失敗します。Nikonの公式記事には、こう書かれています。
「Shoot a 30-second shot as the Aurora moves around the sky and you're going to have less-sharp edges and not as defined shapes to the displays as you'd get with four- or eight-second exposures.」
(オーロラが空を動き回るなか30秒で撮ると、4秒や8秒で撮ったときよりも、輪郭がぼやけ、形がはっきりしなくなる)
つまり、長く露光するほど明るくはなりますが、そのぶんオーロラの動きが重なって、カーテンのような形が溶けてしまいます。星は止まって見えるので長い露光でもよいのですが、オーロラは生き物のように動くからです。
だから、考え方はこうなります。動きが速いとき、激しいときほど、シャッターは短く。逆に、ゆっくり揺れているだけの淡いオーロラなら、少し長めにして明るさを稼ぐ。Nikon公式の幅は2〜30秒で、「30秒を超えると地球の自転で星が流れ始める」とも書かれています。上限は30秒、実際に使う中心は数秒〜十数秒と覚えておくと間違いません。
OM SYSTEMの公式ページに書かれている基本設定は15秒で、これは同社の12mm F2.0というレンズでの例です。これも否定されるものではなく、オーロラが穏やかな晩なら、そのくらいまで伸ばす選択もあるということです。
ピントは「無限遠」——でも、目盛りを信じすぎない
暗闇ではオートフォーカスが迷います。Nikon公式の方法は2つです。
- オートフォーカスをオフにして、レンズのピントリングを無限遠のマークに合わせる
- 山・木立・建物・地平線のような遠くの一点にAFで合わせてから、AFをオフにする。ピントリングが動かないようテープで固定するという提案もあります
OM SYSTEMの公式ページはさらに慎重で、「明るい星を利用してライブビューで拡大表示して、星が一番小さく見える場所を探します。仮撮影して拡大表示再生で確認すると確実です」と書いています。レンズの無限遠マークはぴったりとは限らないので、この確認作業を省かないでください。せっかくのオーロラが、ピントがずれていたせいでぼやけるのは、いちばんもったいない失敗です。
見落としやすい3つの設定
① 手ぶれ補正はオフにする。OM SYSTEMの公式設定は「手ぶれ補正:OFF」です。理由はSony公式の星空撮影の案内に書かれていて、「三脚使用時は手ブレ補正機能の誤作動を防ぐため」とあります。
② 長秒時ノイズ低減は、場合によってオフ。これも同じ公式ページに書かれていて、「撮影時間と同じ処理時間がかかるので場合によってOFFにすることもある」とあります。15秒撮れば、そのあと15秒待たされる、ということです。刻々と変わるオーロラを撮るときに、待たされるのは大きな損失です。
③ 三脚とリモート操作を使う。Nikon公式も、長時間露光のために三脚を使うこと、そしてケーブルレリーズ(リモート)を使うことを必須の準備として挙げています。シャッターボタンを指で押す振動が、数秒の露光では写ってしまうからです。
いつ、どこで見られるか——フェアバンクス観光局の公式情報
オーロラは、撮影技術より先に「見られるかどうか」が問題です。ここも、確認できた公式情報だけでお伝えします。アラスカ州フェアバンクスの観光局(Explore Fairbanks)は、こう公表しています。
- オーロラが見られるシーズンは、8月21日〜4月21日(フェアバンクス)
- 「空が晴れていて、十分に暗ければ、フェアバンクスでは平均して5晩のうち4晩オーロラが見られる」
- 「最低3晩滞在し、夜遅い時間に積極的に外へ出る人は、見られる確率が90%を超える」
ここから学べるのは、日数に余裕を持つことです。1晩だけの滞在だと、天気が悪ければそれで終わりです。観光局自身が「最低3晩」を勧めているのは、天気という避けられない不確実さを、滞在日数で吸収するためです。
なお、これはフェアバンクスの観光局が出している数字であり、他の地域(北欧、カナダ、アイスランドなど)にそのまま当てはまるものではありません。出かける先の観光局や現地ツアーの情報を、必ず確認してください。
寒さ対策——撮影の質を左右します
観光局の案内には、「重ね着をして、しっかり暖かくしてください。長時間、屋外にいることになります」とあります。オーロラ待ちは、数時間動かずに立ち続けることも珍しくありません。
カメラ側の対策は、雪・冬景色の撮影ガイドにまとめています。バッテリーは寒さで消耗が早くなるので、予備を体温で温められる内ポケットに入れておくこと、そして暖かい室内に戻ったときの結露にも注意してください。
スマホでオーロラは撮れるのか
撮れる可能性はあります。ただし、オーロラは星空よりも難しい被写体です。
基本は、星空のスマホ撮影と同じです。フラッシュを切り、スマホを三脚などで固定し、夜景モード(iPhoneはナイトモード)を使う。この手順は星空のスマホ撮影ガイドでAppleとGoogleの公式情報に沿って詳しく書いています。
ひとつ、正直にお伝えしておきます。AppleとGoogleの公式ヘルプには、オーロラについての記載は見当たりませんでした。そのため、「iPhoneやPixelでオーロラがきれいに撮れる」と言い切れる根拠は、私が確認した範囲にはありません。また、先ほど書いたとおり、オーロラは動くので、長く露光するほど形がぼやけます。長い露光を前提とする夜景モードとは、あまり相性がよくないと考えられます。本気でオーロラを撮りたいなら、カメラのほうが有利です。
機材は「明るい広角」と「三脚」の2つ
Nikon公式が勧めるのは、f/1.8またはf/2.8の明るい広角レンズです。実際、NikonのプロはNIKKOR Z 20mm f/1.8 Sや14-24mm f/2.8を使っていると紹介されています。ソニーのEマウントなら、次のレンズが条件に合います。
そして三脚は必須です。長い露光で数秒間、微動だにしないことが求められます。軽さとのバランスで選ぶなら、次のカーボン三脚が現実的です。
カメラ本体については、暗所で高感度に強いものほど有利ですが、機種の優劣より先に、「明るいレンズ」「三脚」「リモート操作」の3つをそろえるほうが効果は大きいはずです。機種選びの参考にはミラーレスおすすめランキングをご覧ください。
よくある質問
オーロラ撮影のカメラ設定の目安を教えてください。
マニュアルモードで、f/1.8〜f/2.8の明るい広角レンズを開放付近で使い、シャッタースピードは4〜10秒前後から始めます。ISOは1600前後が出発点で、その晩のオーロラの明るさに応じて調整します。ピントは無限遠に固定し、手ぶれ補正はオフにします。Nikon公式の幅は2〜30秒、OM SYSTEMの公式例は15秒・ISO 400で、いずれも「オーロラの明るさに応じて変更する」前提の目安です。
オーロラのシャッタースピードは、長いほどいいのですか?
長いほどいいわけではありません。Nikonの公式記事には、30秒で撮るとオーロラの輪郭がぼやけ、4秒や8秒のほうが形がくっきり出ると書かれています。長く露光すると明るくはなりますが、動いているオーロラが重なってしまうためです。動きが速いときほど短くするのが基本です。
オーロラはいつ見られますか?
アラスカのフェアバンクスでは、観光局によればシーズンは8月21日〜4月21日です。空が晴れていて十分に暗ければ、平均して5晩のうち4晩見られ、最低3晩滞在すると見られる確率が90%を超えるとされています。これはフェアバンクスの数字なので、他の地域は現地の観光局やツアーの情報を確認してください。
ピントはどうやって合わせればいいですか?
Nikonの公式記事では、オートフォーカスをオフにしてピントリングを無限遠に合わせるか、遠くの一点にAFで合わせてからAFをオフにする方法が紹介されています。OM SYSTEMの公式ページは、明るい星をライブビューで拡大して、星が一番小さく見える位置を探し、仮撮影して拡大再生で確認するよう勧めています。レンズの無限遠マークはぴったりとは限らないためです。
スマホでオーロラは撮れますか?
撮れる可能性はありますが、AppleとGoogleの公式ヘルプにはオーロラについての記載がなく、きれいに撮れると言い切れる根拠は確認できませんでした。基本はフラッシュを切り、三脚などで固定して、夜景モード(iPhoneはナイトモード)を使う星空と同じ手順です。ただし、オーロラは動くため長い露光は輪郭がぼやけやすく、本気で撮るならカメラのほうが有利です。
長秒時ノイズ低減はオンにしたほうがいいですか?
OM SYSTEMの公式ページでは、基本設定として「オート」にしたうえで、「撮影時間と同じ処理時間がかかるので場合によってOFFにすることもある」と注記されています。15秒撮れば15秒待たされるため、刻々と変わるオーロラを撮るときは、オフにして連続で撮るという選択もあります。
まとめ
オーロラ撮影の設定は、「明るい広角レンズ」「数秒〜十数秒のシャッター」「ISO 1600前後」「無限遠のピント」「手ぶれ補正オフ」が出発点です。そして、シャッターは長ければよいわけではなく、動きが速いときほど短く。Nikon公式が30秒より4〜8秒を勧めている点が、いちばん見落とされやすいところです。
設定よりも大事なのは、現地での日数です。フェアバンクス観光局が「最低3晩」を勧めているように、天気という運に勝つ方法は、滞在日数を確保することしかありません。出発前に、まず日程に余裕があるかを見直してください。
Tabi