カメラの仕様表に「手ブレ補正7.0段」「最大7.5段」と書かれているのを見て、「その数字は何を表しているのか」「機種によって違うのはなぜか」と迷ったことはありませんか。段数が大きいほど良さそうに見えますが、数字の読み方を知らないと、機種選びで損をすることがあります。
この記事では、ソニー・OM SYSTEM・富士フイルム・ニコン・キヤノンの公式な仕様や説明をもとに、「段数」の意味、手ブレ補正の3つの方式、機種ごとの数字の比べ方、旅行での選び方を整理しました。
- 手ブレ補正の「1段」は、シャッタースピードを2倍遅くできるという意味
- ボディ内・レンズ内・電子式の3つの方式の違いと、協調制御
- 公式の段数を機種別に比べた表(7.0段・7.5段・8.0段など)
- 同じ「7.0段」でも条件が違い、単純に比べられない理由
- 夜景・薄暗い室内・望遠・動画で、手ブレ補正に何を求めるか
💡 この記事は「手ブレ補正の段数の読み方」に特化しています。シャッタースピードの基本(1/焦点距離の目安)は旅行写真の構図・設定Tips、絞り・シャッタースピード・ISOの関係は露出の三角形、夜景の設定は夜景撮影ガイドをご覧ください。
先に結論:「1段=シャッタースピード2倍」。ただし数字は条件つき
先に、押さえたいことを4つにまとめます。
1. 1段は、シャッタースピードを2倍遅くできるという意味。CIPA(カメラ映像機器工業会)の規格では、補正なしと補正ありで、ブレずに撮れる最長の露出時間の比をEV(段)で表します。1EVは、露出時間を2倍にできる、という意味です。
2. 段数は、メーカーが決まった条件で測った最大値。測定に使うレンズや向きが機種ごとに違うため、他社の数字と単純には比べられません。
3. 方式は3つある。ボディ内(センサーを動かす)、レンズ内、電子式(映像を切り出す)です。写真には前の2つ、動画の歩き撮りには電子式も効きます。
4. 段数が効くのは「手のブレ」だけ。被写体が動くことによる「被写体ブレ」には効きません。
「段」とは何か:シャッタースピードを何倍遅くできるか
手持ちで撮るとき、シャッタースピードが遅いと、手の揺れで写真がぶれます。手ブレ補正は、その揺れを打ち消して、遅いシャッタースピードでもぶれにくくする機能です。
「段」は、シャッタースピードの単位です。1段分遅くすると、露出時間は2倍になります(1/100秒 → 1/50秒)。たとえば「5段」なら2の5乗で32倍、「7段」なら128倍です。
よく使われる「1/焦点距離」という目安を例にします。これは、50mmのレンズなら1/50秒より速ければぶれにくい、という経験則です。この目安に補正の段数を重ねると、理屈の上では次のようになります。
| 補正の段数 | 倍率 | 50mmでぶれにくい目安(理論値) |
|---|---|---|
| なし | 1倍 | 1/50秒 |
| 3段 | 8倍 | 約1/6秒 |
| 5段 | 32倍 | 約0.6秒 |
| 7段 | 128倍 | 約2.6秒 |
この表は、数字の意味をつかむための理論値です。実際のぶれにくさは、撮る人の姿勢、焦点距離、シャッターを押す瞬間のブレ方で変わります。数字どおりに撮れるとは限らないので、「余裕が増える目安」として読んでください。姿勢で変わる部分は、カメラの持ち方・構え方で解説しています。
手ブレ補正の3つの方式
| 方式 | しくみ | 特徴 |
|---|---|---|
| ボディ内(IBIS) | カメラ本体の中で、センサーを動かして補正する | どのレンズでも効く。キヤノンの解説では、レンズ側では補正しにくい「ロールブレ」(レンズの軸まわりの回転)にも対応できる |
| レンズ内(OIS・IS・VRなど) | レンズの中の部品を動かして補正する | 望遠側で出やすい大きな角度のブレに強い。ボディ内補正のないカメラでは、レンズが頼り |
| 電子式 | 映像を少し切り出して、ソフトで揺れを打ち消す | 主に動画向け。画面が少し狭くなる(クロップ)。ZV-E10 IIはこの方式だけ |
協調制御:ボディ内とレンズ内を合わせて使う
ボディ内とレンズ内の両方を持つ組み合わせでは、2つを連動させる「協調制御」があります。ソニーはα7C IIで、ボディ内補正とレンズ側補正の組み合わせでより高い効果を得られると案内しています。OM SYSTEMは、OM-5で、ボディ内のみで最大6.5段、対応レンズと組み合わせる「5軸シンクロ手ぶれ補正」で最大7.5段と案内しています。
キヤノンも、ボディ内とレンズ側の補正を連動させる協調制御を、EOS R5・R6の世代から導入していると説明しています。
公式の段数を機種別に比べる
公式に確認できた数字を並べます。測定の条件がそれぞれ違うため、あくまで目安として見てください。
| 機種 | 手ブレ補正(公式) | メモ |
|---|---|---|
| Sony α7C II | 7.0段 | CIPA規格、FE 50mm F1.2 GM装着時(ソニー公式) |
| Sony ZV-E1 | 5.0段 | 焦点距離に応じた値、CIPA基準(ソニー公式) |
| Sony ZV-E10 II | ボディ内なし | 動画は電子式の「アクティブモード」のみ |
| Fujifilm X-S20 | 7.0段 | CIPA規格、ピッチ/ヨー方向、XF35mmF1.4 R装着時(富士フイルム公式) |
| OM SYSTEM OM-5 | ボディ内 6.5段/協調時 最大7.5段 | 5軸シンクロ手ぶれ補正。対応レンズが必要(OM SYSTEM) |
| Nikon Z6III | 8.0段 | ボディ内補正(ニコン) |
| Canon EOS R8・R10・R50 | ボディ内なし | 手ブレ補正は、レンズ内ISが頼り |
7.0段と書かれた α7C II と X-S20 を例にすると、測定に使ったレンズが違います(50mm F1.2 と 35mm F1.4)。つまり、この2機種を「同じ7.0段だからどちらも同じぶれにくさ」と読むのは正確ではありません。数字の差を細かく比べるより、「ボディ内があるか」「協調制御に対応したレンズがあるか」のほうが、機種選びでは大切です。
数字の落とし穴:段数が効かない場面
- 被写体が動く場合:手ブレ補正は、カメラの揺れを打ち消す機能です。走る子どもや電車など、被写体が動くときのブレには効きません。シャッタースピードを速くする必要があります。
- 望遠側:焦点距離が長いほど揺れの影響が大きく、段数どおりの効果を得にくくなります。望遠ではレンズ内ISや協調制御が頼りです。
- 動画:動画の歩き撮りは、静止画の段数とは別に考えます。ソニーは、動画向けに電子式の「アクティブモード」を用意していますが、画面が切り出される(クロップされる)ため、画角が少し狭くなります。
- 三脚を使うとき:固定したときの手ブレ補正の設定は、機種によって案内が異なります。説明書で確認してください。
旅行での選び方:何に使うかで決める
| 撮りたいもの | 手ブレ補正に求めること |
|---|---|
| 夜景・薄暗いレストランや教会の中(三脚なし) | ボディ内補正があると、シャッタースピードを遅くしても撮りやすい。ISOを上げすぎずに済む |
| 望遠での風景・動物 | ボディ内とレンズ内を連動させる協調制御に対応しているか |
| 街歩きスナップ | 明るい屋外ならシャッタースピードを稼げるので、補正の段数を気にしすぎなくてよい |
| 動画の歩き撮り | 電子式のアクティブモードや、ジンバルとの併用も選択肢(ジンバルランキング) |
たとえば、旅先で三脚なしの夜景やスローシャッター撮影を試したいなら、ボディ内補正のあるカメラが向いています。逆に、軽さと価格を優先して、ボディ内補正がない機種を選ぶ場合は、レンズ内ISのレンズを選び、シャッタースピードを速く保つ工夫が必要です(夜景撮影ガイド)。
手ブレ補正の強さで選ぶ1台:OM SYSTEM OM-5 Mark II
手ブレ補正を重視して旅行用の1台を選ぶなら、この記事ではOM SYSTEM OM-5 Mark IIをおすすめします。ボディ内のみで最大6.5段、対応レンズとの組み合わせ(5軸シンクロ)で最大7.5段をうたっていて、約418gと軽く、IP53の防塵防滴も備えています。弱点は、センサーが小さいぶん、高感度の画質でフルサイズに及ばない点です。詳しくはOM-5 レビューで解説しています。価格は2026年10月時点の価格.com最安で117,479円です。
よくある質問(FAQ)
手ブレ補正の「1段」とは、何ですか?
シャッタースピードを2倍遅くできる、という意味です。CIPAの規格では、補正なしと補正ありで、ブレずに撮れる最長の露出時間の比を、EV(段)で表します。5段なら32倍、7段なら128倍の長い露出時間でも、ぶれにくくなる、という目安です。
段数が大きいカメラほど、必ずぶれにくいですか?
必ずしもそうではありません。段数は、メーカーが決まった条件(レンズ・向きなど)で測った最大値です。たとえば、α7C II(7.0段)はFE 50mm F1.2 GM、X-S20(7.0段)はXF35mmF1.4 Rで測っていて、条件が違います。実際は、撮る人の姿勢や焦点距離でも変わります。
ボディ内補正のないカメラは、手ブレに弱いですか?
ボディ内補正がなくても、レンズ内にISなどの補正があれば、ある程度は補えます。キヤノンのEOS R8・R10・R50はボディ内補正がなく、レンズ内ISが頼りです。ソニーのZV-E10 IIも、ボディ内補正がなく、動画は電子式のアクティブモードのみです。
三脚を使うときは、手ブレ補正をオフにしますか?
三脚に固定するときの手ブレ補正の設定(オンのままでよいか、オフにするか)は、機種によって案内が異なります。お使いの機種の説明書で確認してください。
動いている被写体にも、手ブレ補正は効きますか?
効きません。手ブレ補正は、カメラの揺れを打ち消す機能です。走る子どもや電車など、被写体そのものが動くときのブレは、シャッタースピードを速くして止めます。
まとめ:段数は「条件つきの目安」、選ぶ決め手は方式と使い方
手ブレ補正の段数は、シャッタースピードを何倍遅くできるかを示す、条件つきの数字です。
- 1段は、シャッタースピードを2倍遅くできるという意味(CIPA)
- 方式は、ボディ内・レンズ内・電子式の3つ。協調制御に対応するかも確認する
- メーカーごとに測定条件が違うため、数字の小さな差にこだわらない
- 段数が効くのは手のブレだけ。動く被写体には、速いシャッタースピードを使う
夜景や薄暗い室内を三脚なしで撮るなら、ボディ内補正のある機種が心強い選択です。最後の1台は、ご自分の旅のスタイルに合わせて決めてください。
Tabi