「日中の滝や川を、雲海のように滑らかに撮りたいのに、シャッター速度を落とすと真っ白に飛んでしまう」——風景写真を撮る旅行者なら一度は感じたことがあるはずです。明るい屋外でスローシャッターを使うと、光が入りすぎて写真が真っ白になってしまう。これを解決するのがNDフィルターです。
私自身、初めてNDフィルターを使ったのは長野の滝を撮りに行ったときでした。フィルターなしでは白く飛ぶだけだった水の流れが、ND64を1枚レンズに着けるだけで、絹のように滑らかな一枚に変わったときの感動は今でも覚えています。NDフィルターは「暗くするだけ」の地味な存在に見えて、風景写真の表現の幅を最も劇的に広げてくれる道具です。
ただし、NDフィルターは減光の強さ(段数)や固定式・可変式の違いによって、向いている撮影シーンが大きく変わります。本記事では、30カ国以上を旅してきたRueが、旅行者目線で減光段数・コーティング・携行性・価格を比較し、NDフィルターおすすめTOP5をご紹介します。
- NDフィルターを選ぶ5つのポイント(減光段数・固定式or可変式・色再現性・径・価格)
- 2026年おすすめNDフィルターTOP5(各商品リンクあり)
- 5本の詳細スペック比較表
- 滝・街撮り・動画など、シーン別の減光段数の選び方
- よくある疑問をまとめたFAQ
💡 この記事は「NDフィルターのランキング」に特化しています。NDとCPLフィルターの違いや、そもそもどちらを選ぶべきか迷っている方はND・CPLフィルター選び完全ガイドを、青空や水面の映り込み対策を探している方はCPLフィルターおすすめ5選をご覧ください。
NDフィルターの選び方5つのポイント
NDフィルターは見た目がほぼ同じでも、減光の強さや構造で写りや使い勝手が大きく変わります。以下の5つのポイントを押さえれば、旅先で後悔しないフィルター選びができます。
1. 減光段数——ND8・ND64・ND1000の使い分け
NDフィルターは減光できる強さ(段数)によって種類が分かれます。ND8(3段減光)は日中の滝や川の流れを軽く滑らかにする程度に向いた、最初の1枚に最適な段数です。ND64(6段減光)はより強いシルキーな水表現や、日中の人通りを目立たなくしたい街撮りに向いています。ND1000(10段減光)は真昼の晴天下でも数十秒〜数分の超長時間露光ができ、雲の流れを描いたり水面を完全に均したりする表現に使います。段数が大きいほど構図・ピント合わせが難しくなるため、まずはND8やND64から慣れていくのがおすすめです。
2. 固定式 vs 可変式——荷物を減らすか、失敗を減らすか
NDフィルターには、1枚で決まった段数しか使えない「固定式」と、リングを回して段数を調整できる「可変式」があります。可変式は1枚で何段階もの減光量をカバーできるため、荷物を減らしたい旅行者には魅力的です。ただし広角レンズで強くかけると、画面の一部が暗くなる「X状ムラ」が出やすいという弱点があります。標準〜望遠域中心なら可変式が扱いやすく、広角風景をメインに撮るなら固定式を複数枚揃えるほうが失敗が少ないです。
3. 色再現性——色被りを抑えるコーティング
安価なNDフィルターや強い減光(ND1000など)では、赤外線の影響で画面全体がわずかに赤や紫がかる「色被り」が起きることがあります。高精度なガラスやコーティングを採用したモデルほど、この色被りが少なく、編集での色調整の手間を減らせます。長時間露光をよく使うなら、この色再現性は重視したいポイントです。
4. フィルター径——使用レンズのサイズを確認
NDフィルターはレンズ先端の直径(フィルター径。49mm・58mm・67mm・77mmなど)に合わせて選ぶ必要があります。レンズ側面やレンズキャップの裏に「⌀67mm」のように記載されているので、購入前に必ず確認しましょう。複数のレンズを使う場合は、最も大きい径のフィルターを買い、ステップアップリングで他のレンズにも流用する方法もあります。
5. 価格帯——4,000〜9,000円が主な選択肢
NDフィルターは4,000円台の固定式エントリーモデルから、可変式や高段数モデルの9,000円前後まで幅があります。固定式は段数ごとに買い足す必要があるため、複数枚揃えると総額は上がります。旅行用の1本目であれば、まず汎用性の高いND8か、荷物を減らせる可変式から検討するのがバランスの取れた選択です。
NDフィルターおすすめTOP5【2026年版】
以下はすべて67mm径での比較です。他の径をお探しの方も、同シリーズで径違いが販売されているのでメーカー名・シリーズ名で検索してみてください。
1位 Kenko PRO1D プロND8(W) — 最初の1枚に選ぶならこれ
NDフィルターを初めて使うなら、まず候補に挙げたいのがKenko(ケンコー)のPRO1D プロND8(W)です。3段分(1/8)の減光で、日中の滝や川の流れを軽く滑らかにする表現から、人物撮影で絞りを開けたいときの調整まで幅広く使えます。薄枠タイプなので広角レンズでもケラレにくく、独自の「PRO1D NDコート」でニュートラルな色再現を保っています。
Kenkoは国内のフィルター市場で高いシェアを持つ老舗ブランドで、価格.comの人気売れ筋ランキングでも常連です。価格は4,600円前後と手に取りやすく、「NDフィルターがどれくらい写真を変えるのか、まず試したい」という方に最適な1枚です。実売価格・在庫は各ECサイトでご確認ください。
2位 MARUMI DHG ND64 — 滝・川の本格的なスローシャッターに
ND8では物足りない、もっとしっかり水の流れを滑らかにしたいという方には、MARUMI(マルミ光機)のDHG ND64が向いています。6段分(1/64)の減光で、日中の滝や川でも数秒単位のスローシャッターが切れるようになり、雲海のような水の表現が本格的に狙えます。
MARUMIのNDフィルターはニュートラル性が高く、色再現性に優れているのが特徴。色彩に影響を与えることなく光量だけを落とせるため、編集での色調整もほとんど不要です。1955年創業のフィルター専業メーカーとしての信頼性もあり、価格は4,200円前後。「そろそろ本格的な長秒露光に挑戦したい」という方に最初のステップアップとしておすすめです。
3位 K&F Concept 可変NDフィルター ND2-400 — 1枚で何段階もカバー
固定式を何枚も持ち歩くのが荷物になる、という方にはK&F Concept(ケーアンドエフ・コンセプト)の可変NDフィルター ND2-400(Nano-Xcelシリーズ)がおすすめです。リングを回すだけでND2相当からND400相当まで無段階に調整でき、これ1枚で薄暗い場面から真昼の炎天下まで幅広くカバーできます。28層のナノコーティングにより低反射率とHD超解像力を実現しています。
可変式は構造上、広角レンズで強くかけると画面の一部が暗くなる「X状ムラ」が出やすい弱点がありますが、標準〜望遠域中心の撮影や動画のシャッタースピード調整用途では扱いやすさが際立ちます。価格は8,400円台とやや高めですが、フィルター1枚分の荷物と出費で複数段数をまかなえる合理性があります。
4位 Kenko PRO ND1000 N — 日本製・真空蒸着の高ニュートラル10段
真昼の炎天下でも数十秒〜数分の超長時間露光を狙いたいなら、Kenko PRO ND1000 Nが有力な選択肢です。10段分(1/1000)という強力な減光により、雲の流れを描いたり水面を完全に均したりする表現ができます。真空蒸着技術を採用し、高いニュートラル性能で色彩への影響を抑えているのが特徴です。
薄枠タイプで日本製という安心感もあり、価格は6,300円台。10段クラスのNDフィルターは減光量が大きい分だけ色被りが起きやすいジャンルですが、色の正確さにこだわりたい方は、この製品の色再現性の高さが効いてきます。旅先の名瀑や雲海を狙うなら、三脚とあわせて用意しておきたい1枚です。
5位 Haida NanoPro ND1000 — コスパの良い10段の選択肢
10段減光は欲しいけれど、Kenkoよりもう少し価格を抑えたいという方には、Haida(ハイダ)のNanoPro ND1000があります。ナノコーティングを採用し、10ストップ(ND1000)の強力な減光を実現。薄枠設計で広角レンズにも配慮されています。
価格は6,900円台とKenko PRO ND1000 Nに近い価格帯ですが、ブランドとしての選択肢を広げたい方、すでに他のHaida製品を使っていて統一したい方に向いています。超長時間露光は色被りが起きやすい領域なので、購入前に自分の作例チェックや口コミも参考にすることをおすすめします。
5本のスペック比較表
今回ご紹介した5本の主要な特徴をまとめました。選ぶ際の参考にしてください。
| 製品名 | 減光段数 | タイプ | コーティング | 特徴 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|---|
| Kenko PRO1D プロND8(W) | 3段(ND8) | 固定式 | PRO1D NDコート | 最初の1枚に最適 | 約4,600円 |
| MARUMI DHG ND64 | 6段(ND64) | 固定式 | DHGコート | 本格的なスローシャッター | 約4,200円 |
| K&F Concept 可変ND ND2-400 | 可変(ND2〜400) | 可変式 | 28層ナノコーティング | 1枚で荷物を減らせる | 約8,400円 |
| Kenko PRO ND1000 N | 10段(ND1000) | 固定式 | 真空蒸着 | 高ニュートラル・日本製 | 約6,300円 |
| Haida NanoPro ND1000 | 10段(ND1000) | 固定式 | ナノコーティング | 10段クラスの選択肢 | 約6,900円 |
※価格・仕様は2026年8月時点の目安です。実際の価格・在庫は各ECサイト・メーカー公式でご確認ください。
シーン別——NDフィルターの活かし方
NDフィルターは減光段数によって向いているシーンが変わります。旅先でよくあるシーン別に、選び方の目安を整理しました。
滝・川の長秒露光——ND64〜ND1000
滝や川を絹のように滑らかに撮るには、シャッター速度を1〜数秒以上に落とす必要があります。日中の明るい滝ならND64、木陰など光量が少ない場所や、さらに強い滑らかさを狙うならND1000が向いています。三脚との併用が前提になるので、あわせて用意しておきましょう。
日中の人通り・車を消す街撮り——ND1000
観光地で人が写り込まずに建物や風景だけを撮りたい、あるいは車のライトを光の軌跡として描きたい——そんなときはND1000クラスの強い減光が効果的です。数十秒の露光で、動いている人や車は写真にほとんど写り込まなくなります。夜景撮影の長時間露光テクニックとも相性の良い使い方です。
雲の流れを描く風景——ND1000
空の雲がまるで絵筆で描いたように流れる表現は、数分単位の超長時間露光でのみ実現できます。真昼の晴天下でこれを狙うには、ND1000クラスの強力な減光が必須です。山・高原の風景撮影でも活躍する表現方法です。
動画撮影のシャッタースピード調整——可変NDフィルター
動画撮影では「シャッター角180度ルール」(フレームレートの2倍のシャッター速度が自然な motion blur になるという目安)を守るため、明るい屋外では常時NDフィルターで光量を落とす必要があります。撮影中に明るさが変化するシーンでは、都度フィルターを交換せずに済む可変NDフィルターが圧倒的に便利です。
まとめ——迷ったらKenko PRO1D プロND8(W)から
NDフィルターは、日中の明るい環境でもスローシャッターや長時間露光を可能にし、滝や川、雲、人通りといった「時間の流れ」そのものを写真に写し込める道具です。段数や固定式・可変式の違いを理解しておけば、旅先で撮りたい表現に迷わず対応できます。
初めての1本で失敗したくない方は、汎用性が高く価格も手頃なKenko PRO1D プロND8(W)がおすすめです。本格的なスローシャッターを狙うならMARUMI DHG ND64、荷物を減らしたいならK&F Concept可変ND、雲の流れや水面を完全に均したいならKenko PRO ND1000 NかHaida NanoPro ND1000というように、撮りたい表現で選んでみてください。次の旅先で、日中でも「時間を止めた」ような一枚を撮ってみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. NDフィルターとCPLフィルターの違いは?
NDは光の量そのものを減らして長時間露光を可能にするフィルター、CPLは反射光をカットして空や水面を鮮やかにするフィルターです。効果がまったく異なるため、目的に応じて使い分けます。詳しくはND・CPLフィルター選び完全ガイドで解説しています。青空や水面の映り込み対策を探している方はCPLフィルターおすすめ5選もご覧ください。
Q. 可変NDフィルターにX状ムラが出るのはなぜ?
可変NDフィルターは2枚の偏光膜を回転させて減光量を調整する構造のため、特に広角レンズで強くかけると、光の入射角の違いにより画面の一部が暗くなる「X状ムラ」が発生しやすくなります。標準〜望遠域中心の撮影であれば目立ちにくいので、広角風景をメインに撮るなら固定式のNDフィルターを複数枚揃えるほうが失敗が少ないです。
Q. ND1000で色被りするのはなぜ?どう防ぐ?
強い減光を行うNDフィルターは、可視光だけでなく赤外線も一部通してしまうことがあり、これがセンサーに影響して画面全体が赤や紫がかる「色被り」の原因になります。IRカット性能やコーティングの質が高い製品ほど色被りが少ない傾向があります。撮影後にRAW現像で色被りを補正する方法もあわせて覚えておくと安心です。
Q. NDフィルターは何枚も必要?
固定式の場合、撮りたい表現に応じてND8・ND64・ND1000を使い分けたくなるため、複数枚揃える方も多いです。荷物を減らしたい場合は、1枚で幅広い段数をカバーできる可変NDフィルターがおすすめです。まずはND8か可変NDのどちらか1本から始めて、必要に応じて買い足していく形で問題ありません。
Tabi